利水作用のある薬や食材 漢方薬剤師のおはなし

タラコママ
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こんにちは漢方認定薬剤師のタラコママです

漢方の勉強を始めると気血水(きけつすい)という言葉を耳にすると思います。生態を維持するために必要な三要素のことですが、その中の「水」が滞った状態を水滞と言います。この水滞を改善するための漢方薬を利水薬と呼びます。

利水作用のある生薬

沢瀉(タクシャ)

オモダカ科のサジオモダカの塊茎を用います。通常は周皮を除いたものを使用します。成分はトリテルペノイド(アリソールA,B アリソールAものアセテート)、デンプン、レシチンなどです。五苓散として浮腫やめまいの改善を目標に利水薬として用いられるほか、清熱作用を期待して猪苓湯として膀胱炎や排尿障害の改善に用いられます。山茱萸と合わせて八味地黄丸六味地黄丸として排尿促進し残尿感の改善に使われることもあります。

猪苓(チョレイ)

ブナ・カエデ・クヌギなどの腐食した根に寄生するキノコの菌核を乾燥させたもです。成分はステロール類(エルゴステロール)、脂肪酸、多糖類です。利水作用があり排尿によって膀胱炎・むくみなどを改善します。その利水作用は茯苓より強いと言われています。滑石と共に配合されたは、腎炎、膀胱炎、血尿、排尿痛、水溶性の下痢などの改善に使われます。

猪苓湯、五苓散などに配合されています。

タラコママ
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泌尿器の症状改善には猪苓湯が第一選択で出されることが多かったよ

茯苓(ブクリョウ)

アカマツやクロマツなどに寄生するマツホドの菌核を乾燥させたものです。マツホドもキノコの一種です。成分はトリテルペン(エブリコ酸、パヒマ酸)、ステロール、多糖類(βーパヒマン)などです。利水作用はありますが弱めです。健胃作用があり、胃内停水による食欲不振や消化不良に用い、胃内停水を除いて胃腸機能を整えます。精神安定作用もあるので、水滞や瘀血による気の上撃によって起こる精神不安にも用いられます。

五苓散、苓桂朮甘湯、酸棗仁湯、六君子湯などに配合されています。

蒼朮(ソウジュツ)

キク科のホソバオケラの根茎を乾燥して用います。成分は精油(βユーデスモール、ヒネソール)、ポリアセチレン化合物(アトラクチロジン)などです。生薬で用いる時は蒼朮の表面にカビ状の白い綿上結晶が見られます。精油成分が結晶化しているものであり、これがたくさん付着している方が良品です。生薬の袋を開封してすぐがたくさん見られて、数日経過すると少しずつ白っぽい結晶が減っていきました。

タラコママ
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患者さんから「薬にカビが生えている」と言われたことがあったよ。薬の成分で、たくさんついているほど良品だと教えてあげよう。

蒼朮は主に体表の湿をとってくれます。

胃腸の湿を除いて、食欲不振や消化不良などを改善する健胃作用があります。蒼朮の配合された健胃作用のある方剤として平胃散、胃苓湯があります。

また、鎮痛作用もあり、風湿による関節痛や筋肉痛に用います。利水作用により風湿を除いて気の流通を促すことで関節や筋肉の疼痛が軽減されます。蒼朮の配合された鎮痛作用のある方剤として二朮湯、疎経活血湯、五積散があります。

蒼朮は白朮と比較されることが多いです。(白朮と蒼朮の違いについてはこちらをクリック

白朮(ビャクジュツ)

キク科のオケラ、もしくはオオバナオケラの根茎を乾燥して用います。白朮はお屠蘇の原料としても知られています。お正月に飲むことで、一年の邪気を払うと言い伝えられてきました。

成分は精油(ユーデスマ−4(14)、7(11)ージエン−8ーオン、アトラクチロン、アトラクチレノリドⅠ〜Ⅲ)などです。

白朮は蒼朮と比較されることが多いです。(白朮と蒼朮の違いについてはこちらをクリック

木通(モクツウ)

アケビ科のアケビの茎を横切したものを用います。成分はトリテルペノイドサポニン(アケボシドStb〜f,h〜k)などです。利尿作用、清熱作用、通経作用などがあります。車前子と共に配合された五淋散はでは排尿障害を改善し,排尿痛や血尿の改善に用いられます。竜胆と合わせて配合された竜胆瀉肝湯ではその清熱作用により,炎症を抑え陰部の不快感の改善に用いられます。

中国では以前,木通としてウマノスズクサ科のキダチウマノスズクサを基原とする「関木通(カンモクツウ)」が一般的に流通していました。しかしこの関木通には腎障害を来たすアリストロキア酸が含まれていることが認められたため,現在は使用禁止となっています。日本向けに出荷されるものに「関木通」が配合される可能性はありません。現在では中国国内でも使用禁止にはなっていますが,地方によっては全く存在しないとは言い切れないので注意が必要です。

防已(ボウイ)

ツヅラフジ科のオオツヅラフジ,アオツヅラフジの茎,根茎を用います。成分はアルカロイド(シノメニン、ジシノメニン、シナクチン、ツヅラニン、マグノフロリン)、ステロールなどです。湿気や風に当たると悪化する関節痛やむくみ用いられます。体表の湿を除くことで浮腫や倦怠感を改善します。体表の湿の停滞が原因で引き起こされる筋肉痛・関節痛の改善に用いて鎮痛をはかります。防已茯苓湯、木防已湯、防已黄耆湯などに配合されています。

薏苡仁(ヨクイニン)

イネ科のハトムギの種子を用います。成分はデンプン、タンパク質、脂肪油、多糖類、ステロール、コイクセノリドなどです。麻杏薏甘湯、薏苡仁湯は薏苡仁の利湿作用により関節痛、筋肉痛に使われます。腸癰湯は薏苡仁の排膿作用によって化膿性疾患に用いられます。参苓白朮散料は薏苡仁の建碑作用により慢性下痢に用いられます。

滑石(カッセキ)

滑石は天然の含有ケイ酸アルミニウムおよび二酸化ケイ素などからなっています。滑らかな感じのする白色の鉱物なので滑石と名付けられました。成分は加水ハロサイト、カオリナイトです。清熱・利尿作用があり膀胱炎、急性尿道炎、膀胱結石などに用いて、消炎や利尿をはかります。清熱・解暑作用があり、夏場の日射病、熱射病に用い、清熱をはかり、口渇の改善をはかります。猪苓と共に配合される猪苓湯は腎炎、膀胱炎、血尿などに用いられます。石膏や甘草と共に配合される防風通聖散は身体の熱をさまし口渇や煩熱の改善に用いられます。山梔子と共に配合される五淋散は尿道炎、膀胱炎、残尿感の改善に用いられます。

車前子(シャゼンシ)

オオバコ科のオオバコの種子を用います。黒胡麻のように小さな粒々です。

成分はイリドイド、粘液性多糖、フラバノン配糖体などです。利水作用、清熱作用があります。木通と共に配合される竜胆瀉肝湯五淋散は、尿道炎や膀胱炎による排尿痛、血尿に用いられます。茯苓と共に配合される牛車腎気丸や清心蓮子飲は、水分代謝を促し排尿促進します。菊花とともに配合され、目の充血や痛み、結膜炎に用います。

利水作用のある方剤

五苓散

むくみに対しては、まず五苓散が第一選択薬になります。あらゆるむくみに効き目があり、老若男女に使いやすい方剤です。喉が渇いてたくさん水を飲むにもかかわらず尿量が少ない人や、頭痛、胃内停水にも使います。二日酔いの時に服用することもあります。

構成生薬は、沢瀉、猪苓、茯苓、蒼朮、桂皮の五つです。桂皮以外の4つにはそれぞれ利尿作用があります。桂皮には身体を温めて血流を良くする作用があり、利尿作用をサポートします。

散剤で服用するのが効果的と考えられています。

当帰芍薬散

当帰芍薬散は女性の不定愁訴に用いられる方剤の中でトップクラスの頻度で用いられます。痩せ型で顔色が悪いひとの、むくみ、月経不順や月経痛、疲労、立ちくらみ、頭痛、不眠などに用いられます。

構成生薬は、当帰、芍薬、蒼朮、茯苓、沢瀉、川芎です。利水作用のある生薬と婦人科領域の生薬で構成されています。蒼朮、茯苓、沢瀉で利水を促し、水滞によって血流が悪くなり血の不足がおこっているので、当帰や芍薬で補血します。むくみだけの場合は五苓散が第一選択になりますが、そこに瘀血の症状も加わると当帰芍薬散を用いる方が効果的です。

散剤の形で服用するのが効果的と考えられています。

胃苓湯

五苓散の効きが悪い場合、胃苓湯で効果が出ることがあります。口渇やみぞおちの不快感、食欲不振や下痢などの消化器症状に加えてむくみがある場合に効果を発揮します。このタイプのひとは胃内停水が見られるため、みぞおちを軽くたたくとチャポチャポと音がします。

構成生薬は蒼朮、厚朴、陳皮、猪苓、沢瀉、白朮、芍薬、茯苓、桂皮、大棗、生姜、甘草です。

胃苓湯は、五苓散平胃散という胃腸の調子を整える方剤が組み合わさったものになります。そのため、消化器症状もあって浮腫んでいるタイプのひとに使いやすいです。蒼朮、白朮によって利水し、厚朴が胃腸の機能を促進してくれます。消化吸収をきちんとおこない、身体全体の調子を整えることで水の動きが活発になり、むくみも改善されます。

防已黄耆湯

水ぶとりで顔色が悪いタイプの人に使われる方剤です。肥満傾向で夕方に足がむくんだり、むくみの部分を指で押さえると跡が残る場合には防已黄耆湯が効果を発揮します。関節痛や膝の痛みがある人にも使われます。

構成生薬は、防已、黄耆、蒼朮、大棗、甘草、生姜です。

防已には、利水作用だけでなく鎮痛作用もあるので、関節痛や膝の痛みにも効果を示すのです。黄耆は利水作用よって汗のかき過ぎを抑える作用や、補気作・昇堤作用により、貧血や顔青、めまいなどの改善にも効果があります。蒼朮には利水によって鎮痛作用を発揮します。大棗と甘草には健胃作用があります。生姜には身体を温める作用、胃腸の働きを助ける作用、止嘔作用があります。

利水作用が期待できるハーブや食材

漢方薬だと、病院に通ったりドラッグストアで相談したりとちょっと億劫になってしまう方もいるかもしれません。そんな時は、ハーブや気血水を考えた食材を普段の生活の中に取り入れる方法もあります。

タラコママ
タラコママ

食事やティータイムに取り入れるのが続けやすくておすすめだよ


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十薬(ジュウヤク)

ドクダミ茶としても知られている十薬は、古くから民間薬として用いられ多くの薬効を持つことから「十薬」の名がついたと言われています。毒を矯める(ためると読み、正しく治すという意味を持つ)ことから、ドクダミと呼ばれるようになったという一説もあります。ドクダミ科の多年草で、日本全国各地の比較的湿った場所に生息しています。利尿作用により身体にたまった毒素を排出してくれるので、むくみや冷えの改善、便秘などに効果を発揮します。

ハトムギ

上記で紹介した薏苡仁(ヨクイニン)は、一般的にはハトムギとして知られています。漢方薬だけではなく、お茶として広く親しまれています。水分代謝をアップしてむくみを改善します。身体の中の余分な熱をとり、排膿効果もあるのでシミ、イボ、吹き出物などの肌のトラブルの改善にも用いられます。

ハイビスカス

身体の余分な熱を冷まし、水分代謝を良くしてくれます。そのためむくみの改善や夏バテに用いられます。また、シミやそばかすにも効果的です。

金針菜(キンシンサイ)

ユリ科のホンカンゾウの花のつぼみを乾燥させたものです。身体の熱をさまし、水分代謝を良くすることで、ほてり、むくみ、排尿異常、黄疸などに効果があります。血の巡りを改善し、月経痛や貧血に対して使われることもあります。このように、水滞に用いられる

だけでなく、瘀血、血虚、気滞と幅広く使われます。

あずき

あずきには利尿作用、解毒作用があります。そのため梅雨の時期など新陳代謝の悪くなる時期や、むくみを改善したい時におすすめな食材です。また食物繊維が豊富で肌荒れの改善にも効果的です。

きゅうり

きゅうりはウリ科の野菜で、95%が水でできている水分たっぷりの食材です。水分代謝を盛んにする作用があるので、排尿作用を促したりむくみを改善する作用があります。身体の熱をとる作用があるので、夏バテの予防にも効果があります。

スイカ

スイカは身体の熱を冷ましたり、喉の渇きを潤してくれる作用があります。そのため、口内炎や発熱後や夏バテ時の水分補給にも効果的です。顔がほてったり、頭がすっきりしない時や、むくみ、排尿異常が気になる時にもおすすめの食材です。

タラコママ
タラコママ

夏に旬をむかえる野菜や果物は、利水作用があったり身体の熱をとる作用があるものがたくさんあるよ。

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