妊娠中に服用できる漢方薬 漢方薬剤師のおはなし

タラコママ
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こんにちは薬剤師タラコママです

みなさんは今までに漢方薬を飲んだことはありますか?聞いたことはあるけど実際に飲んだことがある方は意外と少ないかもしれません。なんとなく体に良さそうで、副作用もなさそうだし誰でも飲めるんでしょ、と思われがちな漢方薬。しかし、全ての漢方薬が誰にでも使えるわけではありません。副作用もあれば、体質によって避けなければならない生薬もあるのです。私もことあるごとに漢方の力を借りてきましたが、西洋薬が使いにくい妊娠中や授乳中は通常の時よりも、一層漢方に頼りたいと思う機会が増えました。そこで今回は妊娠中に漢方薬を服用する際に気をつけるポイント実際に服用できる漢方薬についてまとめてみたいと思います。普段気軽に飲んでいる常備薬が使いづらい妊娠期。漢方薬を使ってうまく乗り切っていきましょう。

妊娠中に服用できる漢方薬

タラコママ
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妊娠中に漢方薬は飲めるの?

結論から言うと、妊娠中に漢方薬を飲むことはできます。ただ、妊娠中は普段とは違う特別な状態ではあるため、必ずかかりつけ医に確認してからと言うことになります。妊娠中に服用することができる漢方薬の条件として赤ちゃんに十分な栄養を送ると共に、母体を妊娠中毒症から守る安胎作用があることが大切です。安胎効果のある生薬は、子宮収縮を抑制する作用があるので安心して使用することができます。

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妊娠中に安心して使える生薬

杜仲(トチュウ)

杜仲は中国では、人参、鹿茸と並ぶ3大名薬の一つで、日本でも古くから杜仲茶として親しまれています。杜仲の有効成分で有名なのは血圧降下作用で、そのほか抗ストレス作用利尿作用糖代謝の改善、虚弱体質の改善作用が報告されています。漢方の古書には「筋骨を強くし、精気を増し、腰・足・膝の痛み、流産の予防によい」と記載されていて、妊婦の腰重や帯下、不正性器出血の改善に使用されています。

人参(ニンジン)

人参も先ほどご紹介した杜仲と並んで中国では3大名薬の一つとされています。日本漢方の方剤にも頻用されている有名な生薬です。私たちの食卓に並ぶ野菜の人参とは別物で、色は白っぽいです。ウコギ科のオタネニンジンという植物の細かい根を取り除いた根の部分を使用します。人参は補気強壮薬で、気を産生する本である胃腸系を強めて、気を補うと同時に体全体の強壮をはかります。人参の有効成分には、疲労回復、記憶過程の改善、抗ストレス、消化運動亢進、ストレス性胃潰瘍抑制、高血圧の改善、抗アレルギーなどの作用が報告されています。人参の滋養強壮作用を利用した料理として参鶏湯(サムゲタン)があります。

白朮(ビャクジュツ)

白朮の薬理作用として、健胃作用、利尿作用、汗止作用があげられます。健胃作用により、食欲不振・腹部膨満感・下痢などに用いられます。

艾葉(ガイヨウ)

お茶やお菓子お風呂などで古くから親しまれているヨモギは、乾燥させると艾葉と呼ばれる生薬になります。体を温めて冷えを取り除き、痛みを止める働きがあります。また止血作用によって、子宮出血・血便・血尿・吐血などの虚血性の出血性疾患に使われます。安胎作用によって冷えによる腹痛を治し、流産を予防します。外用薬としても使われ、入浴剤として使われる場合冷え性や腰痛、湿疹の改善が期待されます。また、お灸で使われるモグサも艾葉で作られています。

陳皮(チンピ)

陳皮はみかん科のウンシュウミカンの成熟した果皮を乾燥させたもので自宅でも簡単に手作りすることができます。無農薬栽培でワックスを使用していないみかんの皮を天日干しすることで作ることができます。陳皮には胃腸を整え食欲不振や腹部の膨満感を治す健胃作用と、肺部の湿邪を取り除いて咳を治し痰を除く鎮咳去痰作用があります。

冬虫夏草(トウチュウカソウ)

冬虫夏草は滋養強壮や不老長寿のための高級食材として重宝されてきたキノコ類の一種です。漢方薬やサプリメントとしても注目されていて、最近では化粧品に含まれていることもあります。冬虫夏草には免疫力の向上、老化防止、生活習慣病の改善、がんの予防、骨粗鬆症の予防、ストレスの改善効果などの健康効果が期待されます。

黄耆(オウギ)

黄耆はマメ科のキバナオウギの根を乾燥させたもので、止汗作用、補気作用、排膿作用、利水作用などがあります。特に滋養強壮や体力回復、食欲不振、息切れの改善に効果的で、身体のバリア力を高めるので風邪をひきやすい人や花粉症の予防に使われます。黄耆をたくさん使うと、副作用で体に痒みがでる場合があります。そんな時は、同様の効果を期待しつつも副作用を回避するために晋耆(シンギ)が使われることがあります。

黄芩(オウゴン)

黄芩はシソ科のコガネバナの周皮を除いた根を乾燥させたものです。清熱作用、止瀉作用、安胎作用、止血作用が期待されます。小柴胡湯の副作用として有名な間質性肺炎の原因がこの黄芩だと考えられる場合もあります。

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妊娠中に安心して使えるの漢方薬

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は、妊娠中のみならず女性に使われる代表的な漢方薬です。水滞や瘀血の改善に効果があり、妊娠中のむくみ、習慣性流産、痔、腹痛などに使われることがあります。流産予防で使われる場合安胎作用を強化するために黄芩を加えて使われることもあります。また、妊娠中毒症で現れやすい高血圧、蛋白尿、浮腫の改善にも使われます。

芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)

芎帰膠艾湯は地黄、芍薬、当帰、甘草、川芎、艾葉、阿膠の7種類の生薬で構成されています。地黄、芍薬、川芎、当帰からなる養血安胎作用のある四物湯に、艾葉や阿膠などの止血作用のある生薬が加わった構成です。出血を止める作用のあるので、不正性器出血、血便、血尿として用いられますが妊娠中は流産予防としてよく用いられます。分娩後の持続出血などにも用いられます。

妊娠中の漢方薬使用例

上記には安心して服用できる生薬・漢方薬をまとめましたが、場合によっては慎重投与に位置付けられているものであっても医師の判断によって処方される場合もあります。症状別にその一例を紹介します。

感冒

香蘇散(こうそさん)

妊娠中に風邪症状が現れた場合には香蘇散が第一選択薬になります。風邪の初期や、頭痛や頭が重く感じる時などに適しています。

参蘇飲(じんそいん)

咳、痰が絡む、鼻水、鼻詰まりが見られる時には参蘇飲が適しています。風邪といえば葛根湯のイメージが強いですが、参蘇飲の方がいつでも誰にでも使いやすいので本当は参蘇飲の方が有名になってもいいのではないかと思います。

タラコママ
タラコママ

香蘇散も参蘇飲も、胃腸が弱い人でも飲めるところが使いやすいポイントだよ

便秘

桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

妊娠中は虚証で便秘は習慣性であることが多いため、桂枝加芍薬湯が処方されるがあります。ほぐす作用のある芍薬が多く含まれていることが特徴で、ストレスが原因と考えられる過敏性腸症候群の第一選択薬となります。

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

小建中湯も妊娠中の便秘の第一選択薬になります。小建中湯にも芍薬が多く含まれます。子供の便秘にも使いやすい漢方薬です。

タラコママ
タラコママ

小建中湯は甘いので小さな子供でも飲みやすいよ

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群とはいわゆる妊娠中毒症と呼ばれていたものですが、研究が進み現在では「妊娠20週以降から出産後12週まで高血圧、または高血圧にタンパク尿をともなう場合」とされています。高血圧、蛋白尿に加えて浮腫も妊娠中毒症で見られる主な症状になります。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

上記でも紹介した通り、高血圧、蛋白尿、浮腫に対して使われます。

釣藤散(ちょうとうさん)

高血圧を改善する作用があります。釣藤散には胃薬がどっさりと入っているので、妊娠中のみならずお年寄りにも使いやすい漢方薬です。それもそのはず、胃薬である六君子湯の構成生薬がほとんどそのまま含まれています。

五苓散(ごれいさん)

五苓散は水滞を改善する漢方薬の代表で、妊娠高血圧症候群時に蛋白尿や浮腫に対して使われます。吐き気が強く内服することが難しい場合、坐薬として用いることもあります。

妊娠悪阻

小半夏加茯苓湯は妊娠悪阻に使われる一番メジャーな漢方薬です。お湯ではなく、冷水で服用することが効果的に吐き気を抑えるためのポイントです。小半夏加茯苓湯の中には生姜(ショウキョウ)という生姜を乾燥させた生薬が配合されていますが、これにすりおろした生の生姜を加えて服用すると効果はさらにアップします。

まとめ

今回は、妊娠中に服用できる漢方薬についてご紹介しました。妊娠中は身体が虚証と言われる状態であるため、過度の発汗や利尿作用、瀉下は避けた漢方薬選びがなされます。禁忌に分類される生薬は現在のところ医療用エキス製剤(生薬を煮出して顆粒状にした粉薬タイプの漢方薬)には含まれていませんが慎重投与が含まれている医療用エキス剤は多く存在します。現在のところ医療用エキス剤による妊婦の副作用は報告されておらず安全だと考えられますが、全ての医療用エキス剤について安全性が確立しているとは言えないので、かかりつけ医、かかりつけ薬剤師に相談してからの服用、また長期間の服用ではなく必要な時にピンポイントで服用することが大切になってきます。

医療用エキス剤以外にもご自身の体調に合わせて漢方茶、ハーブティーなどご自身の体調に合わせて選ぶこともできます。長いようであっというまに過ぎてしまう妊婦生活。リラックスできるアイテムを見つけておなかの赤ちゃんと一緒にのんびり過ごしてはいかがでしょうか。

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